サプライチェーンデザイン(SCD)における、キーワード。
今回は「グリーンフィールド分析」(Green Field Analysis)というキーワードです。
(今回は少し、長文になります。)

「グリーンフィールド分析」(Green Field Analysis)というのは、まだあまり馴染みの無い言葉なのですが、言うなれば 「新しく拠点を追加したい、という場合に、地球上のどこに設立するのが良いかを考えること」と言えます。

例えば、最近何かと話題に上るamazonですが・・・
「クロネコヤマトも佐川急便も匙を投げてしまった。よし、こうなったら自分達で物流拠点を作って、配送するぞ!」
と思っても、(いくら国土が狭いとは言え)この日本のどこに物流拠点を置けば良いのかは多少、迷うことでしょう。

1か所だけなら、多分東京近郊かな?何だかんだ言って物量が一番集中しているだろうし・・・
・・・と、これなら何となく分かります。
しかし、2か所なら?東京近郊と大阪近郊?いや、「東日本全体用」と「西日本全体用」と考えると少し場所が変わる?
まして、3カ所作るなら?
・・・「勘」で答えを言う事はできますし、「それなりな理由」は作れます。しかし、根拠が薄い。

今まで何度も述べて来たように「お金」で評価して語る事が一番有効ですが、しかしながら、そもそも「拠点候補」が無ければ、「配送網」を想定する事すらできませんし、そうなればコストや採算性の見積もりもできません。お金で語らないと拠点配置の判断ができないのに、拠点配置(の候補)が無いとお金の話が持ち出せない・・・という「卵が先か鶏が先か」みたいになってしまいます。
それを解決する1つの手段が、この「グリーンフィールド分析」(Green Field Analysis)です。

大雑把に言うと「一旦、コストは置いといて、まずは配送先(お客様)とその物量を根拠として、最も効率的と思われる物流拠点の位置(候補地)を算出する」事です。
候補地さえ出て来てくれれば、「では、その辺の地代家賃(拠点の固定費)はどのくらいか?」などといった「コスト情報」を想定できるようになりますし、拠点の場所が決まれば「お客様までの配送距離」も決まりますから、配送料も計算できるようになります。つまり、「金額ベースでの評価」ができるようになるわけです。

さて、ではこの「グリーンフィールド分析」。どのような根拠で「ここ!」と地図上の点を指し示すのでしょうか?(ちなみに、ダーツではありません。)
これは極めて単純で、「【距離×物量の合計】が最小となるようなポイント」を、計算により導き出しているのです。

例としてまず、一番単純な例として「配送先は顧客Aと顧客Bの2か所だけ」「必要な物流拠点(DC)は1か所だけ」としましょう。すると物流拠点(DC)の位置としては「顧客Aと顧客Bを結ぶ直線上の、どこか」が望ましいであろう事は容易に分かります。(下図参照)
GFA_01

しかし、では直線上のどこが一番良いのか?そこがポイントです。
DC→顧客への配送コストがあればすぐ計算できますが、その情報はありません。そこでキーとなるのが、上でも述べた「物量」です。直線上の各点で「物量×距離」を計算し、その合計が一番小さくなる点を選べば良いのです。

下の図は、「直線上の配置場所」を一旦、3か所だけ(「顧客A寄り」 「真ん中」 「顧客B寄り」)に絞った上で、さらに顧客の物量を3パターン(Aが多い、両者同じ、Bが多い)に分けて、それぞれの組みあわせで「物量×距離」の値を計算したものです。
細かい図で恐縮ですが・・・御覧の通り「物量がどうなるかによって、拠点を構えるべき場所が変わる」事が分かります。
今回の例で言えば、
・顧客Aと顧客Bの物量が全く同じなら、DCは直線上のどこに置いても良い。
・顧客Aの物量が多いなら、DCは顧客A寄りにした方が良い。
・逆に、顧客Bの物量が多いならDCはB寄り。
という結果が出ました。
(今回の図は細かいので、絵をクリックして最大化していただく事をオススメします)

GFA_02


当然と言えば当然なのですが、物量が多ければ多いほど、移動(輸送)した時の費用がかさむ可能性が高くなります。従いまして、DCの最適な座標というものは、「物量の多い顧客の方に”寄る”)という性質があるのです。(できるだけ、大量の物品については輸配送距離を短くしようとする。)
この性質に基づいて計算された「最適と思われる拠点新設の候補地」は、「重心地」と呼ばれます。(「中心」、でなく「重心」です。)DCの候補位置が物量の多いお客様に寄っていく様子を、大きな星の重力に引っ張られていく様子に見立てたのですね。

なお実際には「配送先が2つだけ」という事はありませんし、「候補となる場所」も3か所ではなく、「地図上に(ほぼ)無限に存在」します。DCの最適位置、すなわち「重心地」とは、地図上に広く散らばる、それら大小さまざまな「星」からの「引力」がバランスする地点、となるわけです。これを手作業で、上図のような計算に基づいて判断できるか?と言えば「無理!」ですが、ツール(ラマソフト(LLamasoft)等のSCDツール)なら計算してくれます。
そしてまず一度候補地を見せてくれれば、具体的な検討がスタートできます。(結果として「そんな地価の高い所は無理だよ」という結果が出る事も実際の導入事例では存在しますが、「理論的な重心地」が分かっていれば検討も進めやすくなります。)
ゆえに、グリーンフィールド分析はサプライチェーンデザインプロジェクトの「とっかかり」として実施される事が多いです。

以上が、「グリーンフィールド分析」(Green Field Analysis)のあらましです。


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